商品について
壮大なスケール感
繊細な音楽表現
自然な再生音にさらなる磨きをかけ
生まれ変わったコンサートグランドシリーズ最上位モデル。
※こちらの商品は1本での販売です。2本ずつでのご注文をお願いいたします。
◆ネオジウムマグネットを搭載した新型のシルクドームツィーターを採用。繊細かつ妥協の無い製法により、透明感あふれ細かなニュアンスを再現し、艶やかな最上級の高音域再生を可能にします。
◆ウーファーユニットにはミッドウーファー同様に独自の高機能樹脂「X3P」を使用し、極めて高い制動性を実現。凹状に湾曲させたラバーエッジはドライバーの駆動力を損なう事無く的確に伝えます。
◆クロスオーバーネットワークをフルリニューアル。オーディオグレードのコンデンサ、誤差1%以内の抵抗など、全てのコンポーネントパーツを長時間に及ぶリスニングテストによって厳選しました。
1989年にウィーンで創業したVienna Acoustics(ウィーン アコースティクス)。ラインアップの中でもとりわけ重要なモデルには、音楽の都に本拠を置く同社らしく歴史的な音楽家達への敬意を込めて、その名を冠してきた。この度、同社のスピーカーの中核を担うコンサートグランドシリーズ最高機Beethoven Concert Grandが、さらに磨き上げられた上で「Symphony Edition」として登場する。
外見の違いは内側に移動したアルミダイキャスト製ベースぐらいで、本体キャビネットのサイズとユニット構成に変更はない。ただし、トゥイーターの磁気回路はLISZTと同一のネオジム仕様に変更され、磁性流体を封入するなど大幅に強化されている。ミッドレンジとウーファーは、リブで補強した透明なスパイダーコーンを引き続き採用。今回はウーファーも剛性を高めたX3P振動板を採用しており、低域から中低域にかけてのレスポンス向上を狙っている。ミッドレンジが受け持つ帯域を前作より50Hzほど下に拡張し、音色の一貫性を狙ったことにも注目しておきたい。
SEへの変更は一見するとマイナーチェンジだが、実際に音を聴いてみると、明らかに新世代の音に生まれ変わっていることに気づく。まず感心したのは、低音域の分解能の高さと切れの良さが著しく向上していること。ムジカ・ヌーダのベースはピチカートのアタックが鋭く、前後する音符の間が団子状につながらない。一音一音の粒立ちが良いので、弾むようなリズムで前に進む。その動きは3個のウーファーを積むフロア型スピーカーとは思えぬほど軽快で、前作に比べても反応が速くなった。広い音域のなかで上下するピチカートの音圧と音色が凸凹にならないのは、ウーファーからミッドレンジへのつながりの良さを意味する。低域の動特性を改善すると響きの透明度が上がり、声や旋律楽器が鮮明に浮かび上がる効果もある。
ショスタコーヴィチやマーラーなど、編成の大きなオーケストラ作品では、動きの良い低音が見通しの良い音場を引き出し、各楽器の関係を鮮やかに描写する。低音の量感は壁との距離など設置条件でかなり変化するので、慎重な位置決めと適切な高さ調整は必須だろう。筆者宅ではスパイクの高さを低めにした状態でローエンドまで深い響きを引き出した。
エソテリックのリマスターSACDで聴いた『ブルー・トレイン』は、サックス、トロンボーン、トランペットそれぞれの特徴を確実に鳴らし分け、実在感の高い描写に舌を巻く。オリジナルマスターのセパレーションの高さを忠実に引き出しつつ、温度感の高さも失っていない。ベースがもたつかず軽快に動くのは期待通りだ。今回のリマスター盤では過剰なエコーが減り、音像のにじみが改善されたことで、丁々発止のやり取りやテンションの高さがかえって生々しく聴き取れる。本機はそのメリットを漏らさず伝え、見事だ。
エイヴィソンアンサンブルが演奏したコレッリをハイレゾ音源で聴き、その資質を本機の音からも実感することができた。ひとことで言えば、まさに目の前で演奏しているようなリアリティの高い音で、録音を介し、再生装置を通して聴いていることを忘れさせるような生々しさがある。コレッリの室内楽曲に代表されるリンレコーズの鮮度の高い録音は、再生機器の音色と空間の再現力が上がると、現実感と臨場感が一気に向上する。そこまで次元の高い表現ができるスピーカーは、本機の価格帯でもそう多くはない。試聴の機会があるなら、ぜひ音源を持参して、本機が引き出すリアリティと質感の高さを実感していただきたい。
文:山之内 正
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。