商品について
フラグシップモデルM-900uの思想と性能を受け継ぎODNF Ver.4.0の採用と4パラレル・プッシュプル出力構成による瞬時最大960W(1Ω)までのパワーリニアリティを確保したステレオ・パワーアンプ M-700u
◆あらゆるスピーカーに対するドライバビリティを追求した120W(8Ω)~瞬時最大960W(1Ω)のパワーリニアリティ。
◆ハイパワー志向と密度感のある音質を高度に両立させたバイアス電流設定による最大6Wまでの純A級動作。
◆高域の歪特性を大幅に改善したODNF Ver4.0 対応3 段ダーリントン4 パラレルプッシュプルの出力モジュール構成。
◆LEDによる電球色照明付きの大型針式アナログレベルメーターを装備。
◆高いレギュレーション性能を誇るEI型大容量590VAの電源トランス。
◆シャーシ電流によるアースインピーダンスの上昇や発生磁界の影響を隔絶するループレスシャーシ構造。
◆4 接点をパラレル接続した大型スピーカーリレーとスピーカー端子までの低インピーダンス化による高ダンピングファクター350 を実現。
◆微小レベルのデリケートな音楽信号を不要な振動から守る、グラデーション鋳鉄製レッグを装着。
◆抵抗やコンデンサーには、ハイエンド製品にふさわしいこだわりのカスタムパーツをふんだんに採用。
◆端子に金メッキ処理を施したハイグレードなACインレットを採用。
◆OFC極太線ノンツイスト構造のラックスマン純正電源ケーブルJPA-10000 を付属(極性表示付)。
ラックスマンより2013年に発売された900シリーズ。2014年秋に登場した「C-700u」「M-700u」からなる700シリーズは、その弟モデルという位置付けになる。
筆者は以前、この音が本当にわかるユーザーはそう多くないのではないかと危惧したことがある。結果的には好評で売れ行きも上々であったそうだから杞憂に終わったようだが、それくらい900シリーズの音は厳しく、またありのままのものであった。
この700シリーズでも、基本的には同じ方向である。というより、音に味を付けるという意識が、現在のラックスマンにはおそらく皆無なのである。技術的に正しいことを積み重ねて、結果的に出てきたのがその製品の音である。それ以上に色を加えた形跡がない。
結局700シリーズの音も無色である。レンジが広く、エネルギーバランスが平坦であるのはむしろ当然とも言える。そしてS/Nが確実に以前のシリーズよりも向上した。さらに立ち上がりが速い。これも旧機に倍加したような印象さえ受ける。
こうした出方は、900シリーズと相似形である。ただわずかに違うのは、わかりやすさ、あるいは近寄りやすさといったことだろうか。この2モデルには900シリーズにはないある種の親しみや優しさを感じる。
例えばボーカルにはそれが端的に表れている。バックのインストルメンタルが生々しく浮かび上がり声の表情が時に甘く時に清々しく変化する様子はスタジオの中で聴いているようにリアルだが、ピンと張りつめたような緊張感より柔らかさが先に来る。だからといって曖昧なわけではなく、ピントがぴたりと合って存在感が鮮明だ。そこに肉質感の誇張や甘ったるさはないが、だからこそ実体感が高いのである。
ピアノも焦点が明瞭で遠近に優れ、タッチの骨格と余韻の豊かさが両立して実在感を引き出す。バロックは瑞々しく艶やかな古楽器の音色がきめ細かく、独奏楽器だけでなく通奏低音の深い沈み方と明快な解像度が鮮やかだ。ジャズではウッドベースやキックドラムが目の前に何の夾雑物もないような透明度で描かれる。オーケストラの雄大なスケールにも不自然さがない。
要するにアンプの存在はほとんど消えている。900シリーズでもそうだったが、若干の違いを言えば本シリーズではわずかに暖かみを感じる。ほんの少しだけ音に温度がある。弱いとかデフォルメされたということではない。このわずかな温度感が、聴く人を快く受け入れてくれる安心感なのだ。透徹した900シリーズでは、この暖かさは得られないかもしれない。
ハイスピードでニュートラル。その基本線は外さずに、ユーザーを自然に正しい方向へ引き寄せてくれるわかりやすさが本シリーズの真価と考える。正確な音は常に快いものである。
文:井上千岳
※AV/オーディオ/ガジェット情報サイト「PHILE WEB」所収記事を短くまとめたものです。